前回、転職時のiDeCo手続きについて取り上げましたが、その中で少し触れた「退職金の受け取り方による税金の違い」を今回は詳しく整理します。新社会人のうちはまだ関係の薄い話ですが、転職を考えるタイミングや、将来の退職金制度を理解しておくうえで知っておきたい知識です。
退職金の受け取り方は、基本的に2パターン
会社の退職金制度やiDeCo・企業型DCの資産は、受け取るときに次の2つの方法から選べることが多いです。
1. 一括で受け取る(退職一時金)
まとめて一度に受け取る方法です。
2. 年金形式で受け取る(分割して定期的に受け取る)
数年〜数十年にわたって、分割で受け取る方法です。
制度によっては、「一部を一括、残りを年金形式」という組み合わせを選べる場合もあります。どちらが得かは、金額や他の収入状況によって変わるため、「絶対にこちらが良い」という単純な答えはありません。
一括受け取りの場合:「退職所得控除」が使える
一括で受け取る場合、税金の計算には退職所得控除という、非常に優遇された仕組みが使われます。
退職所得控除の考え方(簡易版)
勤続年数が長いほど控除される金額が大きくなる仕組みです。たとえば勤続年数が20年を超えると、1年あたりの控除額がさらに大きくなるよう設計されています。勤続年数が1年でも、最低40万円程度の控除枠が用意されているため、短期間の勤務でもゼロからの課税にはなりにくい仕組みです。
さらに、退職所得は「(退職金 − 退職所得控除)÷ 2」という式で課税対象額を計算するため、他の所得(給料など)と比べて税負担が軽くなるよう設計されているのが大きな特徴です。しかも退職所得は、他の所得と合算せずに単独で税額を計算する「分離課税」という扱いになるため、給料や副業の所得が多い年でも、退職金のせいで一気に税率が跳ね上がる、ということが起きにくい仕組みになっています。
年金形式で受け取る場合:「公的年金等控除」の対象になる
年金形式で受け取る場合は、「公的年金等控除」という、別の控除の仕組みが適用されます。この場合、国の年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金など)と合算して控除額が計算されるため、受け取る年の他の収入状況によって、税負担が変わってきます。
また、年金形式で受け取っている期間は、その年の「雑所得」として扱われるため、他の所得(働き続けている場合の給料など)と合算されて税額が決まります。一括受け取りの「分離課税」とは、この点が大きく異なります。
どちらが得になりやすいか(傾向として)
一般的には、一括受け取りの方が税制上優遇されやすいケースが多いと言われています。特に勤続年数が長い場合、退職所得控除の金額が大きくなるため、一括受け取りの税負担が軽くなる傾向があります。
ただし、受け取った一括のお金をその後どう管理するか(使い切ってしまわないか、運用するかなど)という視点も重要なので、税金だけで判断するのではなく、総合的に考える必要があります。年金形式には、「毎月(または毎年)決まった金額が振り込まれるため、計画的に使いやすい」というメリットもあり、一括で受け取ってお金の管理に不安がある人にとっては、むしろ安心材料になる場合もあります。
新社会人が今、知っておく意味
退職金や、iDeCo・企業型DCの出口戦略は、何十年も先の話に感じるかもしれません。ですが、転職のたびに企業型DCの移換手続きが必要になるという話と合わせて、「将来、こうした資産をどう受け取るかという選択肢がある」ことを知っておくと、キャリアの選択肢を考える際の視野が広がります。
また、iDeCoは60歳以降に受け取る際、一括・年金形式・組み合わせのいずれかを選べる仕組みになっています。長期的に積み立てを続けるうえで、「将来の受け取り方まで選べる制度である」という点も、知っておくと安心材料になります。なお、企業からの退職金とiDeCoの両方を受け取る場合、受け取るタイミングが近いと、退職所得控除の枠を分け合う形になり、控除額が目減りすることがあります。受け取り時期をずらすなどの工夫で控除を最大限活かせる場合もあるため、実際にそのタイミングが近づいたら、専門家に相談することをおすすめします。
今後取り上げたいテーマ
退職金やiDeCoの「出口戦略」は奥が深いテーマなので、具体的な受け取りタイミングの考え方などは、また機会を改めて取り上げていきます。
まとめ
退職金やiDeCoの資産は、一括・年金形式という受け取り方によって、適用される税制上の控除(退職所得控除・公的年金等控除)が異なります。一般的には一括受け取りの方が税負担が軽くなりやすい傾向がありますが、受け取った後の管理方法や、他の退職金との受け取り時期の兼ね合いも含めて、総合的に考えることが大切です。
本記事は情報提供を目的としており、個別の税務判断については税理士・所轄の税務署にご相談ください。制度は変更される場合があるため、最新情報は国税庁の公式サイトでご確認ください。

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